未来予想図

2021年11月12日

短時間労働・ワークシェアの実現

一般的な企業では、一日8時間〜10時間という比較的長時間の労働をして、それに見合った対価を得ている訳ですが、誰もがそうした長時間労働を望んでいる訳ではないのではないかと考えています。お金よりも、新しいことを学ぶことや家族と一緒に過ごすこと、スポーツなどの趣味に時間を使うことを大切に思う人たちがいます。

そうした人たちにとって居心地のよい場所となるように、双葉数理技術ではなるべく基本となる一日の労働時間を短くしたいとしたいと考えています。具体的には一日の労働時間を6時間くらいにしたいと考えています。もちろん、業務が忙しくなれば、そうした悠長なことは言っていられなくなることはあるかもしれませんが、できるだけそうした状況が長く続くことがないようにできればと考えています。

もちろん、稼働時間を減らした分、他の企業よりも給与は減ってしまう訳ですが、3人で8時間働くよりも、4人で6時間ずつ働く方がずっと魅力的である…と感じる人たちを集めることができればと考えています。

東京への一極集中の回避

基本的には労働時間が減った分、その影響はどこかで相殺する必要がある訳ですが、それは地価の高い東京から少し離れた場所にオフィスを構えることで、住居費用や通勤時間の削減により実現できるのではないかと考えています。

ちなみに、私は現在埼玉県入間市に住んでいますが、この辺りでは都内に比べて、何分の一かの価格で住宅を購入することができます。都内に通勤しているときには、通勤に2時間弱の時間がかかっていましたが、いまは在宅で働いているため、通勤時間はゼロです。オフィスが近くにあるとしたら、通勤したとしても徒歩10分くらいで通勤することも夢ではありません。しかし、これはオフィスが都心のど真ん中にあったとしたら、なかなか実現しにくいことです。赤坂のオフィスの徒歩 10分の場所に住むのはなかなか難しいからです。

収入が減ることによる影響は、こうした住居費用の削減や通勤時間の削減によってうまく相殺していくことができるのではないかと考えています。例えば、通勤時間で削減した分の時間は、いままで主に女性が担っていた家事や子供の世話などを男性が役割分担することにも繋がってゆくのではないかと考えています。

各個人の自己実現

私は長く企業で働いてきましたが、なかなか自分のやりたいことをやることができませんでした。与えられた眼の前の仕事を一心不乱にやっていれば、いつか上司が自分のやりたいことを実現する手助けをしてくれるはず…と何となく思っていたのですが、そうではありませんでした。

どんなに真面目にやって成果を出しても、仕事がうまく回っている限りは、多くの上司はそのうまく回っている仕組みを維持したいと考えます。「うまく行っている。現状を変える必要はない。」そう考えます。敢えてリスクを犯して、うまく行っている仕組みを変える必要はない訳です。

しかし、そうすると今度は部下である我々はいつまでもやりたいことが実現せずに悶々とします。「いつになったら、チャンスがもらえるんだろうか」「やはり転職すべきだろうか」…そんな風に悶々とします。私の場合はそんな悶々が何年も続いて、結局30代前半で一度会社を辞めました。

ただ、実際人間が一番力を発揮できるのは自分がやりたいことをやっているときです。そういうときには人間は驚くような力や集中力を発揮します。人間は夢中になれることがあると、ついつい時間を忘れて、そういうことにのめり込んでしまいます。そして、そういうある種の「のめり込み」こそが人間を成長させ、ひいては社会を発展させる…と考えています。

ですから、各個人が自分のやりたいことを実現できるようにお互いを助け合ってゆくことが、社会全体のミッションであると考えていますし、より世界を豊かな場所にするための早道であると私は考えています。

サステナブルなキャリア

とは言っても、こうしたことは一企業の力だけでそれを実現できる訳ではありません。 IT企業の社員がある日ふと思いついて「パン職人になりたい」と言っても、一企業がその夢を実現させてあげることは難しい面があります。ですが、もし会社が6時間の勤務で終わり、家に徒歩 10分で帰宅できるとしたら、どうでしょうか?

本当にやる気があれば、家に早く帰れた分、家でパン作りの練習をしたり、学校でパン作りを学んだりできるのではないでしょうか?そうした人生のシフトがうまくできるように、人生に少しだけ「遊び」を持たせてやることが実は大切なのではないかと考えています。

やれるから…と言って、限界まで自分の時間を会社のために捧げてしまうと、ずっとその会社で働き続けられる場合はよいですが、そうでない場合、そこからのキャリアチェンジはより厳しいものになります。ですから、人生に少しだけ遊びを作っておき、そこで常に自分が好きなものを人生に増やしておくことが重要になってくる訳です。そのためにも短時間勤務や通勤時間の削減を実現したいと考えています。

柔軟な組織の実現

いまから20年前、30年前は、一度企業に就職すると、ずっとその企業で働くことが一般的でした。会社を途中で辞めちゃうような人はあまりいませんでした。多少嫌なことがあっても、我慢して20年30年と真面目に働き続けていれば、ゆっくりと昇進していくことができました。それがちゃんとした大人の生き方でした。

ただ、こうしたことを実現するには、実は会社の規模が成長し続けることが前提になります。もっと言うならば、社会全体が成長し続けることが前提となります。それが崩れると、社員を昇進させるためのポストが不足し、平社員のままの 40代・50代があちこちに余るようになります。うまく昇進できた人は「偉い人だから給料を沢山もらえるのは当然」と思ってもらえますが、そうでない人は「無駄に給料をたくさんもらうだけの人」みたいに思われる可能性が出てきます。

おそらく皆さんは「優秀な人は出世できるが、そうでない人は出世できないだけじゃないの?」そう考えるかもしれませんが、実際には企業で出世できるかどうかは必ずしも本人の能力だけで決まってくる訳ではありません。会社が成長しているかどうかであったり、上司との関係が良好であるかどうかであったり、仕事上の成果の見せ方が良いか悪いか…みたいなものであったりします。単純に運のようなものが決定打になることもあります。しかし、実際のところそれは本質ではありません。

企業が本当に強い企業となるためには、会社にちゃんと利益をもたらすような人材が昇進すべきであるのですが、一般的にはそうはなっていません。社内でのパワーバランスや個人の好き嫌いみたいなもので、会社というのは形作られてゆきます。では、どうすればよいでしょうか?

私が考える企業では、リーダーというのはもっと気軽になれたり、辞めたりできるものにしたいと思っています。例えて言うなら、クラスの学級員長のように、誰もが手をあげて、簡単になれるようなものにしたいということです。従来の企業ですと、昇進に凄く時間がかかるので、昇進するにしても降格するにしても、それは非常に重い意味を持っていました。しかし、それがクラスの学級員長を選ぶくらい軽いものだったら、どうでしょうか。もっと意味合いの軽いものになるのではないでしょうか。そして、組織も柔軟に変化することができるはずです。

探索と利用

ただ、こんな風に誰もが気軽にリーダーになれても、その人がリーダーをずっとやり続けてしまうと、他の人がリーダーというポジションを経験してみるチャンスがなくなります。ですから、1年交代とは言いませんが、一定の期間で交代するようにします。それは成果が出ていようが、出ていまいが、関係なく交代します。そして、次の何年かは現場の人間として過ごすことにします。そうすることで、さまざまな社員がもっと簡単にリーダー的なポジションを経験してみることができるという訳です(リーダーというポジションを時分割することで、より多くの人がリーダーを経験してみることができる)。

そして、ある人がリーダーであった間に会社の業績がどう変化したかを後から評価します。そして、その人がリーダーであったときに業績が向上した場合はより短いインターバルでリーダーに立候補できるようにして、そうでない場合はより長いインターバルでリーダーに立候補できるようにします。

そうすることで、さまざまな人の適性をより広く評価できるようになります。ある人は「リーダー向き」のように思われていたけれども、実際には「全然成果を出すことができなかった」ということもあるでしょうし、ある人は「リーダーも面白そうだ」と思ってやってみたけれども、実際には「現場の仕事の方が全然面白かった」みたいな発見もあるかと思います。そういう意味でもより広く人間の可能性を試してみることが企業にとっても重要なのではないかと考えています。

なお、この考え方の背景にあるのは、強化学習と呼ばれる分野で使われる「探索と利用」と呼ばれる考え方で、ロボットなどに未知のものを探索させるときによく出てくるものです。ロボットなどに未知の世界を探索させて、そこから何かを得るには「未知の可能性を探索する」ことと「探索したものを利用する」ことの両方のバランスをうまく取ることが重要な訳ですが、そうした視点を企業の組織づくりにも取り入れることができるのではないか?という訳です。人間の可能性も未知な訳ですから、肩書や年齢、性別などの先入観にとらわれずにいろいろな人の可能性を試してみることが重要なのではないかと考えています。

まあ、そんな風な合理的な考え方に基づいて会社という組織をつくることができればいいな…ということを夢想しています。

Q & A

Q. この企業はいつできますか?

A. いまのところ、この企業は中二病のおじさんの脳内にしかありません。このおじさんは金持ちでもありませんので、アイデアとしてはありますが、いつできるかは定かではありません。こうした企業の形に賛同してくれる人たちが集まってくれば、早く実現できる可能性はあるかもしれませんが、夢のまま終わるかもしれません。

Q. どんな人を求めていますか?

A. ピーター・ティールと言う人の「Zero to One」という本の中では、ベンチャーの最初の段階では同じような能力と同じような嗜好性を持つ人を集めることが重要であると述べられていますので、こうした企業をつくるには、まず私と同じような能力や考え方を持つ人を何人か集めることが重要なのではないかと考えています。

Q. もっと遠方の地方都市に拠点を持つことは考えませんでしたか?

A. 考えました。札幌や福岡、あるいは大阪や名古屋なども、東京に比べるとコンパクトで魅力的な都市ではあります。チャンスがあれば、私もそうした都市に住んでみたいと思っていましたが、結局実現するチャンスはありませんでした。

今回、自分一人でコンサルティングを始める…と考えたときにあまり東京から遠く離れ過ぎてしまうと、クライアントにちょくちょくお会いすることが難しくなってしまうということも考え合わせると、結局現在の埼玉県入間市という場所がそれほど悪くない場所のように思えましたので、現在はこちらに拠点を構えています(単に自宅がこちらにあるというだけなのですが…)。

企業の規模がもっと大きくなったときには、日本のあちこちに拠点を設けて「明日から鎌倉オフィスで仕事します」みたいなことができれば楽しいな…と思いますが、いまのところは夢のまた夢という感じです。

Q. 大企業ではやりたいことは実現できませんか?

A. そんなことはありません。私は既存の大企業を否定するつもりは全くありません。私が経験した 20年前の企業といまの企業では大きくその姿は変わっています。実際最近一緒に仕事をしたとある企業の 30代のリーダーの第一声は「太田さんは何がやりたいですか?」でした。私が企業にいたころはそんなことを聞いてくるリーダーはまずいなかったので、本当に時代は変わったな…と衝撃を受けました。そんな風に世の中の企業も段々と変化しています。先入観にとらわれず、自分の目で判断してみることが何事も重要だと思います。

Q. こうしたアイデアを私の企業に導入してもよいですか?

A. ぜひ導入して下さい。私の場合は、周りを見回して、こうした企業がないように思えたので、私自身がつくるしかない…と考えているのですが、既存の企業がこうした考え方を導入してくれるとしたら、それは非常にありがたいことです。ディスカッションなどもウェルカムですので、ぜひご連絡下さい。

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